大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(ネ)2318号 判決

被控訴人が各種車輛部分品の製造を業とするものであり、被控訴人の雇人訴外菊地篤四郎が控訴人ら主張の日時場所で被控訴人のため運行の用に供していた被控訴所有の自動三輪車を運転中控訴人らの子訴清水徹也と接触し、控訴人ら主張の日時に同訴外人が死亡した事実は、当事者間に争がない。

よつて右清水徹也の死亡が如何なる原因に基くものであるかという点について判断する。

証拠を綜合すると、次の事実を認めることができる。即ち、訴外菊地篤四郎は都電神保町より一ツ橋ロータリーに通ずる幅員約二七米の歩車道の区別のある道路を一ツ橋ロータリー方向に向つて時速約三〇粁で進行していた。他方、被害者清水徹也は単車を運転して急スピードで、歩道の直ぐ右側を自転車で進行していた訴外近藤政司の後方から疾走してきて右近藤の右足をかすめたそのはずみで右の方へ斜めに車も人も傾いたまま、電車軌道と歩道との間の幅員約六米の車道のほぼ中央を進行中の右菊地の運転していた自動三輪車の進路に後方より突込み、同車の直前で顛倒したが、菊地としてはその自動車後方で「ヅーツ」という地面をこする音を聞くと同時に左側ウインドーのやや下方に白いヘルメツト帽の如きものを見た次の瞬間車体にシヨツクを感じた(この時自動三輪車は被害者を轢いていたのである)ので急ブレーキをかけ、ハンドルを右に切つて停車した。被害者は、右自動三輪車に轢かれたため胸腹腔内臓器損傷による内出血に因り死亡した。

以上の事実が認められる。右認定に反する原審証人菊地篤四郎の証言は信用し難い。

しかし、前示各証拠によれば、被害者清水徹也運転の単車が前認定の如く訴外菊地運転の自動三輪車の進路に後方から突込む以前、右単車が右三輪車に並行ないし先行した事実はなかつたことを認め得るから、かかる場合右自動三輪車の運転者たる訴外菊地に左右注視の義務を認めるのは酷であるのみならず、また前認定のように訴外菊地が自車の左側ウインドーのやゝ下方に白いヘルメツト帽の如きものを見た際に、それが被害者が単車に乗り前示の如く傾いた儘突込んで来るものであることを認識し得たとしても、現に訴外菊地がとつた前示措置以上の措置をとることは時間的にいつても期待できることではない。それ故、右事故発生についての過失は、むしろ訴外菊地以外の者に存し、同訴外人には過失がなかつたものと認めるのが相当である。

次に、原審証人菊地篤四郎の証言によれば、被控訴人会社の社長は自動車事故を防止すべく常に注意しているので、右菊地も当日出発に際して車体を点検し、異状のないことを確めたことを認めることができ、また前顕乙第一号証によれば、右菊地の運転した自動車には制動機、ハンドルその他に故障のなかつたことも認められる。

以上の認定事実によれば、本件事故は自動車損害賠償保障法第三条の但書に該当するものといえる。従つて、被控訴人は本件事故につき損害賠償の責任を負わないといわねばならない。

(菊池 川添 花渕)

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